ラが立ち並んでそよいでる鏡のように淀《よど》んだ運河に沿って、散歩をつづける……。それから、たいへんな晩餐《ばんさん》、長たらしい食事――その間、ひとかどの見識と歓喜とをもって食物のことが話される。皆その道の通人ばかりだし、また、田舎《いなか》では貪食《どんしょく》ということが、おもな仕事でありすぐれた技術だからである。その他、事業のことや露骨な冗談や時には病気のことなども、仔細《しさい》にわたってはてしなく口にのぼせられる……。子供のオリヴィエは、片隅《かたすみ》の席について、鼠《ねずみ》の子ほどの音もたてず、ぽつぽつかじるだけで、ほとんど食べもせず、耳を澄まして聞いていた。何一つ聞き漏らさなかった。よく聞き取れないところは想像で補った。幾世紀もの印象が強く刻み込まれてる古い種族の古い家庭の子供らには、しばしば特殊な才能が認められるものであるが、彼もそういう天賦の才能をもっていて、かつて頭に浮かべたこともなければまたほとんど理解もしがたいほどの思想をも、よく察知することができるのだった。――それからまた、血のしたたる汁気《しるけ》のある不思議な物がこしらえられる料理場もあり、ばかげた
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