だれかをまたは何かを純粋にせんがためには、いつもその首を切らざるを得なくなる。――フランスの大批評家らは純粋な音楽をしか容認しないで、その他は衆愚の手に任していた。
 クリストフは自分の趣味がいかに劣ってるかを考えて、非常に心細い気がした。しかし多少慰められたことには、劇を軽蔑《けいべつ》してるそれらの音楽家らが皆、劇のために書いてることだった。歌劇《オペラ》を書かない者は一人もなかった。――しかしそれもまたたぶん、なんら重きをなさない事柄に違いなかった。彼らを批判するには、彼らが希望してるとおりに、彼らの純粋なる音楽によってしなければならなかった。クリストフは彼らの純粋な音楽を捜した。

 テオフィル・グージャールは、国民的芸術に奉仕してるある協会の音楽会に、クリストフを連れていった。そこでは新しい光栄が、徐々に形造られ育《はぐく》まれていた。それは大きな団体であって、幾つもの礼拝堂をもってる小教会であった。各礼拝堂にはその聖者があり、各聖者にはそれぞれ信仰者があって、この信仰者らは好んで隣りの礼拝堂の聖者を悪口していた。それらの聖者らのうちに、クリストフは初め大した差異をおかなかっ
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