をよじ登らなければならないとした。そして長い暗黒のあとに、黄金時代はふたたび来かかってるそうだった。堅い壁はくずれかけている。音響の魔法使が、驚嘆すべき春をよみがえらせかけている。音楽の老木は、ふたたび柔らかな若葉に覆《おお》われようとしている。和声《ハーモニー》の花壇には、無数の花が新しい曙《あけぼの》ににこやかな眼を開きかけている。銀の音《ね》の泉の響きが、小川のさわやかな歌が、聞こえ始めている……。一つの田園詩だった。
 クリストフは非常に喜んだ。しかしパリー諸劇場の広告をながめると、マイエルベール、グノー、マスネー、および彼が知りすぎるほど知ってるマスカーニやレオンカヴァロ、などの名前がいつも出ていた。そういう不貞節な音楽が、娘たちの喜びそうなものが、造り花が、香水の店が、約束のアルミデスの園なのかと、クリストフは友人らに尋ねた。すると彼らは、気を悪くした様子で抗言した。彼らの言うところによれば、そういうものは瀕死《ひんし》時代の最後の名残《なご》りだった。もうだれもそんなものを顧みる者はなかった。――実際ではカヴァレリア[#「カヴァレリア」に傍点]・ルスチカナ[#「ルスチカナ
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