」に傍点]希《のぞ》みをかけざるを得ざるなり[#「みをかけざるを得ざるなり」に傍点]。……
[#ここで字下げ終わり]

 彼は立ち上がった。そして泰然と戦闘を開始した。

 彼はすぐその朝から、奔走《ほんそう》を始めようと決心した。パリーにはただ二人の知人があるばかりだった。二人とも同国の青年だった。一人は旧友のオットー・ディーネルで、マイー町でラシャ商をしてる叔父《おじ》の下に働いていた。一人はシルヴァン・コーンというマインツの若いユダヤ人で、ある大書店に雇われてるはずだった。しかし書店の所在地は不明だった。

 彼は十四、五歳のころ、ディーネルとたいへん親しかった(第二巻朝参照)。恋愛に先立つものでしかも恋愛をすでに含んでいる幼き友情を、彼はディーネルにたいしていだいていた。ディーネルもまた彼を愛していた。この内気で几帳面《きちょうめん》な大子供は、クリストフの狂暴な独立|不羈《ふき》の精神に魅せられてしまって、滑稽《こっけい》なやり方でそれをまねようとつとめていた。クリストフはそれにいらだちもし得意でもあった。そのころ彼らは、驚天動地の計画をたてていた。その後ディーネルは、商業教
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