は、六十歳にもなる主人公が、自分の娘を腹心の友としていた。彼は娘に自分の情婦のことを話し、娘は彼に自分の情人らのことを話した。二人は親しく相談し合った。親切な父は娘の不品行を助けた。親切な娘は父の不貞な情婦に近づいて、もどって来てくれるように懇願し、家へ連れ込んできた。あるいは、りっぱな老人が自分の情婦の内密話の相手になっていた。彼は彼女の情人らのことを彼女と噂《うわさ》し、彼女の放逸の話を懇望し、ついにはそれに愉快をさえ感ずるようになった。それからまた、情人らも出て来るのであった。皆りっぱな紳士であるが、昔の情婦たちの雇い監督となり、彼女らの取り引きや情交などを監視した。社交界の婦人は盗みを事としていた。男子は媒介人であり、娘は淫猥《いんわい》だった。すべてそれらのことは、上流社会、富裕な階級――唯一の有力な階級、においてであった。そういう社会においては、腐敗した商品を華美の魅惑に包んで、客に提供することができるからであった。かく扮装《ふんそう》して市場に立ち現われると、若い女や年取った男どもが、それを非常に喜んだ。屍体《したい》と後宮の臙脂《えんじ》との匂いが、そこから発散していた
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