仲間よりも、これら政治家の連中をより興味深く感じた。人類の熱情や大なる利害問題にたいして、彼らはいっそう活発な打ち開けた知力をもっていた。たいていは南欧生まれの話し上手《じょうず》で、驚くべきほど芸術愛好家だった。その点だけを言えば、「ほとんど文学者と同じだった。もちろん彼らは芸術にかなり無知で、ことに外国の芸術には無知だった。しかし彼らは皆、多少の芸術通をもって任じていた。そしてしばしばほんとうに芸術を愛していた。大臣連中の会議が、小雑誌の会合に似てくることさえあった。ある者は脚本を作っていた。ある者はヴァイオリンをかき鳴らしてワグナー狂だった。ある者は絵画を塗りたてていた。そしてだれも皆、印象派の画を集め、頽廃《たいはい》派の書物を読み、彼らの思想とは大敵である極端に貴族的な芸術を、追従《ついしょう》的に味わっていた。社会主義もしくは過激社会主義のそれら大臣連中が、飢餓階級の使徒らが、精緻《せいち》な享楽の方面における通人を気取ってるのを見ると、クリストフは変な気がした。もちろんそういうことをするのも彼らの権利ではあった。しかし彼から見るとあまり誠実だとは思われなかった。
 最も不思議なことには、彼らは個人としては、懐疑的で快楽主義者で虚無主義者で無政府主義者であるくせに、一度実行に移ると、すぐに熱狂的になるのであった。最も享楽的な連中でも、権力を得るようになると、東方的な小さな専制者に変わるのだった。すべてを意のままに指導して何物をも自由にさせない病癖をもっていた。懐疑的な精神と暴君的な気質とをもっていた。誘惑の方があまりに強いので、専制者中の最も偉大な者によって昔制定された、中央集権制の恐るべき機関を利用せずに、それを濫用してばかりいた。その結果一種の共和的帝政主義が生じ、近年になっては、無信仰的なカトリック主義がその上につみ重なってきた。
 ある期間政治家らは、物体――というのは財の謂《い》いである――の支配をしか主張しなかった。霊魂の方はほとんどそのままに放っておいた。鋳直《いなお》すことができなかったからである。霊魂の方でもまた、政治には関与しなかった。政治は霊魂の上や下をすべり越していた。フランスにおいては政治は、商業や工業の有利なしかし不確実な一分派だと考えられていた。知識階級は政治家らを軽蔑《けいべつ》し、政治家らは知識階級を軽蔑していた。――と
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