意見を述べたてていた。彼らは皆意見を同じゅうしてはいなかったが、彼の恣《ほしいまま》な言葉には皆不快を感じていた。ヴィオラのクラウゼ老人は、いい人物でりっぱな音楽家であって、心からクリストフを愛していたので、話題を転じたいと思った。しきりに咳《せき》をしたり、または、機会をうかがっては駄洒落《だじゃれ》を言ったりした。しかしクリストフはそれを耳に入れなかった。彼はますますしゃべりつづけた。クラウゼは困却して考えた。
「どうしてあんなことを言ってしまいたいのか? とんだことだ! だれでもあんなことは考えるかもしれないが、しかし口に出して言うものではない!」
きわめて妙なことではあるが、彼もまた「あんなこと」を考えていた、少なくともちょっと思いついていた。そしてクリストフの言葉は、多くの疑念を彼のうちに喚《よ》び起こした。しかし彼は、そうとみずから認めるだけの勇気がなかった――半ばは、危険な破目に陥りはすまいかという懸念から、半ばは、謙譲のために、自信に乏しいために。
ホルンのワイグルは、ほんとに何も知りたがらない男だった。だれをも、何物をも、よかろうと悪かろうと、星であろうとガス燈で
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