前もってすっかり判断されていた――その拙劣な作品を判断する機会を、待ちかねていた。
ついにその作品が現われた。
クリストフは自分の多くの作品のうちから、ヘッベルのユーディット[#「ユーディット」に傍点]にたいする序曲を選んだ。ドイツ人の無気力にたいする反動から、その野蛮な元気に心ひかれたのであった。(ヘッベルが常にいかにもして天才の面影をそなえようという下心からもったいぶってることを、彼は感じたので、すでに右の作には厭気《いやき》がさし始めていた。)また生の夢[#「生の夢」に傍点]というバールのベックリン式な誇張的題名と生は短し[#「生は短し」に傍点]という題言のついてる、一つの交響曲《シンフォニー》を添えた。なお番組の中には、一|聯《れん》の彼の歌曲《リード》と数種の古典的《クラシック》作品と、オックスの祝典行進曲一つがはいっていた。クリストフはオックスの凡庸《ぼんよう》なことを感じてはいたが、同僚の誼《よし》みから、自分の音楽会にその作品を一つ加えたのであった。
稽古《けいこ》中はさしたることもなかった。管絃楽団はみずから演奏してるそれらの作品を全然理解しなかったし、また各自
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