結婚し、純粋にゲルマン式な環境にはいって以来、その魅力は彼女にとって、反発心のためいっそう強くなったのであろう。
クリストフに会った最初の晩から、彼女はいつもの持論をもち出した。彼女はフランス人の会話の愛すべき自由さをほめた。クリストフも相槌《あいづち》をうった。彼にとっては、フランスはコリーヌであった。美しい輝いた眼、にこやかな若々しい口、腹蔵ない自由な態度、いかにも調子のいい声。彼はそれについてもっと知りたくてたまらなかった。
リーリ・ラインハルトは、クリストフと非常によく意見が合うので、手を打って喜んだ。
「残念ですわ、」と彼女は言った、「フランス人の若いお友だちがもうここにいないのは。でも仕方がなかったんです。よそへ行ってしまいました。」
コリーヌの面影はすぐに消えてしまった。あたかも花火の輝きが消えて、暗い空の中に突然、星のやさしい深い光が現われるように、他の面影が、他の眼が、現われてきた。
「だれですか。」とクリストフはぎくりとして尋ねた。「若い家庭教師ではありませんか。」
「え!」とラインハルト夫人は言った、「あなたも御存じですか。」
二人はその女の様子を述べた。
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