会主義新聞社に論説をもち込んだ。すると双手を挙げて歓迎された。翌日、その論説は現われた。そして新聞は誇張的な言辞で報ずるのに、才幹ある青年楽匠たるクラフト君の協力を得たこと、労働階級の要求にたいする彼の熱烈な同情は世間周知のものであること、などをもってした。
 クリストフはその注解をも自分の論説をも読まなかった。なぜなら、ちょうど日曜であったその朝、彼は野外散歩に払暁から出かけたのだった。実に晴れ晴れとした気持だった。日の出を見ながら彼は、叫び笑い歌い飛び踊った。もはや雑誌もなく、もはや批評の責任もなかった。時は春であった。あらゆる音楽のうちで最も美しい天と地との音楽が復帰していた。息苦しい臭い薄暗い音楽会場も、不愉快な隣席の聴衆も、つまらない音楽家らも、消えてなくなった。ささやきわたる森から霊妙な歌の起こるのが聞こえていた。そして畑地の上には、大地の表皮を破って生命の芳醇《ほうじゅん》な気が通り過ぎていた。
 彼は光明で鳴りわたる頭をもって、散歩から帰ってきた。すると、不在中に官邸から届けられた手紙を、母から渡された。だれからともつかない形式で書かれたその手紙の趣旨は、今朝クラフト氏
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