いの。」
彼女は彼の歌曲[#「歌曲」に傍点]の意味を説明さした。彼はドイツ語で話した。彼女は彼の口や眼の皺《しわ》までも真似《まね》て発音しながら、猿《さる》のようにすばしこくその言葉をくり返した。それから暗誦して歌う時になると、おかしな間違いをした。わからなくなると、自分で言葉を作り出して、喉《のど》にかかった粗野な音を発するので、二人とも笑いだした。彼女は彼に演奏してもらうのに飽きなかったし、また彼は、彼女に演奏してやり彼女の美しい声を聞くのに飽きなかった。その声には少しも職業的な技巧がなかったし、また小娘のように多少喉にかかる歌い方をしてはいたが、なんとも言えぬはかない感傷的な調子がこもっていた。彼女は思うとおりを腹蔵なく言ってのけた。ある物をなぜ好むかあるいは好まないかを、はっきり説明することはできなかったけれど、その批判のうちにはいつも理由が潜んでいた。不思議なことには、最も古典的でドイツで最も賞美さるる楽節において、彼女は最も退屈がった。彼女は礼儀上多少の世辞は言ったが、しかし明らかに、そういう曲からはなんの意味をも感じていなかった。音楽愛好家やまたは音楽家でさえも、かつ
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