に、落ち込んでいった。彼は同輩らを砲撃した。彼らのうちの一人は、現存の作曲家中最も天分に富んだ者、新進派の最も進んだ代表者、すなわち、実を言えばかなり奇怪ではあるがしかし天才の閃《ひらめ》きに満ちた標題|交響曲《シンフォニー》の作者ハスレルを、あえて攻撃していた。子供のおりハスレルに紹介されたことのあるクリストフは、その昔受けた感激の感謝として、いつも彼にひそかな愛情をいだいていた。ところが今、明らかに無知な馬鹿批評家が、かかる人にたいして訓言を与え、秩序と規範との警告をなすのを見ると、彼は我れを忘れて憤った。
「秩序だと! 秩序だと!」と彼は叫んだ、「君らは警察の秩序よりほかに秩序を知らないんだ。天才は踏み固められた道を進むものではない。天才は秩序を創《つく》り出し、おのれの意志を規範にまで高めるのだ。」
 こういう傲慢《ごうまん》な宣言の後に、クリストフはその不運な批評家をとらえて、彼が近ごろ書いた愚劣な事柄をことごとく取り上げ、厳格な是正を施してやった。
 批評界全部が侮辱を感じた。それまで批評界は戦いから遠ざかっていた。彼らは側杖《そばづえ》を食うようなことをしたくなかった。彼
前へ 次へ
全527ページ中144ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング