・ド・ラ・クロア、フレデリック・ボードリー、エミール・ドゥレロー、シャール・オーギュスト・デジレ・フィロン、サムュエル・デコンバ、プロスペル・ボール。彼は次の人々の詩を読んだ。ジョゼフ・レール師、ピエール・ラシャンボーディー、ニヴェルノア公爵、アンドレ・ヴァン・アセル、アンドリユー、コレー夫人、サルム・ディック侯夫人コンスタンス・マリー、アンリエット・オラール、ガブリエル・ジャン・バティスト・エルネスト・ウィルフリード・ルグーヴェ、イポリット・ヴィオロー、ジャン・ルブール、ジャン・ラシーヌ、ジャン・ド・ベランゼ、フレデリック・ベシャール、ギュスターヴ・ナドー、エドゥアール・プルーヴィエ、ウーゼーヌ・マニュエル、ユーゴー、ミルヴォア、シェーヌドレ、ゼームス・ラクール・ドラートル、フェリックス・シャヴァンヌ、フランシス・エドゥアール・ジョアサンすなわちフランソア・コペー、ルイ・ベルモンテ。クリストフはそれらの詩の汎濫《はんらん》中に迷い込みおぼれ沈んでしまって、散文の方に移っていった。そこには次のような人たちがいた。ギュスターヴ・ド・モリナリ、フレシエ、フェルディナン・エドゥアール・ブュイソン、メリメ、マルー・ブラン、ヴォルテール、ラメ・フルーリー、父デューマ、ジャン・ジャック・ルソー、メジエール、ミラボー、ド・マザード、クラルティー、コルタンベール、フレデリック二世、および、ヴォギューエ氏。また最もしばしば引用されてるフランスの歴史家は、マクシミリアン・サンソン・フレデリック・シェールであった。クリストフはそういうフランスの名家抄の中に、新ドイツ帝国の宣告を見出した。そしてフレデリック・コンスタン・ド・ルージュモンの書いたドイツ人に関する記述を読んで、次のことを教えられた。
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ドイツ人は魂の世界に生きるように生まれている。彼らはフランス人のごとき喧騒《けんそう》浮薄な快活さを有しない。彼らは魂を多分にもち、その愛情はやさしくかつ深い。働いて倦《う》まず、企画して撓《たわ》まない。最も道徳的な人民であり、最も生活期間の長い人民である。ドイツは非常に多くの作家を有し、また美術の天才を有している。他国の人民らが、フランス人たりイギリス人たりスペイン人たることを光栄としているのに反して、ドイツ人はその公平無私なる愛のうちに、全人類を抱擁する。またドイツ国民は、ヨーロッパの中央に位することによって、人類の心であるとともに最高の理性であるように思われる。
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クリストフは疲れまた驚いて、書物を閉じて考えた。
「フランス人は善良なお坊《ぼっ》ちゃんばかりだ。あまり鋭利ではない。」
彼は他の書物を取り上げた。それはも少し程度の高いもので、高等な学校の用に供するものだった。ミュッセーが三ページを占め、ヴィクトル・デュリュイが三十ページを占めていた。ラマルティーヌは七ページ、ティエールは四十ページ近かった。ル・シッド[#「ル・シッド」に傍点]は全部――ほとんど全部のっていた。(ただドン・ディエーグの独白とロドリーグの独白はあまり長いので削ってあった。)――ランフレーはナポレオン一世にたいするプロシアの反感をおだてていた。それで彼にたいしてはページの制限がなかった。彼一人で十八世紀のクラシックの大家全体以上のページを取っていた。千八百七十年のフランスの敗北に関するたくさんの物語は、ゾラの瓦解[#「瓦解」に傍点]から取って来られたものだった。そして、モンテーニュ、ラ・ロシュフコー、ラ・ブリュイエール、ディドロー、スタンダール、バルザック、フローベル、などは出ていなかった。その代わり、前の書物に出ていないパスカルが、珍しい人としてこの書物に出ていた。そしてクリストフは、この狂信家が「パリー付近の女学校ポール・ロアイヤルの神父の一人だった」ことをついでに知った……。(注――ジャン・クリストフが友人ラインハルト家の蔵書から借り出したフランス文学名家抄は、次のようなものだった。一、ストラスブールグの聖ヨハネ学習院長哲学博士フーベルト・ウィンゲラート著、中学校用フランス文粋[#「中学校用フランス文粋」に傍点]、中級第二部、一九〇二年七版、デュモン・ショーベルク出版。二、ハンブールグのヨハネ派学習院中学校長テンデリング改訂、ヘルリッヒおよびブルグイ共著、フランス文学[#「フランス文学」に傍点]、一九〇四年ブルンスウィック版。)
クリストフは何もかも投げ捨てようとした。頭がくらくらしていた。もう何にもわからなかった。「いつまでも堂々めぐりだ、」と彼は思った。なんらの意見をもまとめ上げることができなかった。先途がわからずに幾時間もめちゃくちゃにページをくっていた。彼にはフランス語が自由に読めなかった。非常に骨折っ
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