さで、意見を述べた。編集長のアドルフ・マイは、重々しくでっぷり太って、頭を両肩の間に埋め、粗暴な様子をしてる男で、いつも自説を通そうとしていた。あらゆることに断定を下し、決して人の答弁に耳を貸さず、相手の意見を軽蔑《けいべつ》してるらしく、なお相手をも軽蔑してるらしかった。美術批評家のゴールデンリンクは、神経的に顔の筋肉を震わす癖があり、大きな眼鏡の陰でたえず眼を瞬《またた》き、交際してる画家たちの真似《まね》をしたのに違いないが、髪を長く伸ばし、黙々として煙草《たばこ》を吹かし、決して終わりまで言ってしまうことのない断片的な文句を口ごもり、親指で空間に曖昧《あいまい》な身振りをするのだった。エーレンフェルトは、小柄で、頭が禿《は》げ、微笑を浮かべ、茶褐《ちゃかっ》色の頤髯《あごひげ》を生《は》やし、元気のない繊細な顔つきをし、鈎《かぎ》鼻であって、流行記事や世間的雑報を雑誌に書いていた。彼は甘ったるい声で、きわめて露骨な事柄をしゃべった。機才はあったが、しかしそれも意地悪い才で、また下等なことが多かった。――これらの富裕な青年らは皆、もとより無政府主義者であった。すべてを所有してる時に社会を否定するのは、最上の贅沢《ぜいたく》である。なぜなら、かくして社会に負うところのものを免れるからである。盗人が通行人を劫掠《きょうりゃく》したあとに、その通行人へこう言うのと同じである、「まだここで何をぐずついてるんだ! 行っちまえ! もう貴様に用はない。」
同人中でクリストフが好感をもってるのは、マンハイムにたいしてばかりだった。確かにこの男は、五人のうちで最も溌剌《はつらつ》としていた。自分の言うことや他人の言うことを、なんでも面白がっていた。どもり、急《せ》き込み、口ごもり、冷笑し、支離滅裂なことを言いたてて、論理の筋道をたどることもできず、みずから自分の考えを正しく知ることもできなかった。しかし彼は、だれにたいしても悪意をいだかず、また野心の影もない、善良な青年だった。実を言えば、きわめて率直だというのではなく、いつも芝居をやってはいた。しかしそれも無邪気にやってるのであって、だれにも害を及ぼさなかった。奇怪な――たいていは大まかな――あらゆる空想にたいして、彼は怒《おこ》りっぽかった。それをすっかり信ずるには、あまりに精緻《せいち》でまた嘲笑《ちょうしょう》的だった
前へ
次へ
全264ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング