。しかし気の弱いやや饒舌《じょうぜつ》なルイザは、胸ふさがるような心痛を自分一人に取っておくことができなかった。そして近所の女たちに話した。他の二人の息子《むすこ》にも話した。二人の息子は、クリストフを非難する絶好の機会を利用せずにはおかなかった。ことに、今ではほとんど理由もないのに兄を妬《ねた》みつづけていたロドルフは――クリストフのわずかな好評にもいらだって、あえて自認しかねるような下等な考えで、ひそかに兄の未来の成功を恐れていた(なぜなら、彼はかなり怜悧《れいり》であって、兄の実力を感じていたし、他人も自分と同様にそれを感じていはしないかと思っていたから)――そのロドルフは、自分の方がすぐれてるとしてクリストフを頭から押えつけるのを、この上もなく喜んだ。彼は母の困窮を知っていながら、かつてあまり気にかけたこともなく、母を助け得るだけの十分余裕ある身分でありながら、クリストフの世話にばかり任していた。ところがクリストフの計画を知ると、彼はただちに多くの愛情を示してきた。彼は母親を見捨てるという考えを憤慨して、それを恐るべき利己心だとした。彼は厚顔にも自分でやってきて、クリストフにそれを言った。あたかも鞭《むち》打ちに相当する子供にでも対するがように、ごく横柄《おうへい》に訓戒をたれた。母親にたいする義務や、母親が彼のためになした犠牲などを、傲慢《ごうまん》な様子で説ききかした。クリストフは危うく激怒するところだった。彼はロドルフを狡猾《こうかつ》漢だとし偽善の犬だとして、臀《しり》を蹴立《けた》てて追い出した。ロドルフはその仕返しに母を煽動《せんどう》した。ルイザは彼から刺激されて、クリストフが不孝者のような行ないをしてると思い込み始めた。クリストフには出発の権利がないとくり返し聞かされたし、それは彼女の信じたがってるところだった。彼女は最も強力な武器たる涙に頼ることをしないで、クリストフに向かって不当な非難を加えた。クリストフはそれに反感を覚えた。二人はたがいに厭《いや》なことを言い合った。その結果はただ、それまでなお躊躇《ちゅうちょ》していたクリストフに、出発の準備を急ごうと考えさせたばかりだった。慈悲深い隣人らが母を気の毒がってること、近所の評判では母を犠牲者だとし自分を酷薄漢だとしてること、それを彼は知った。彼は歯をくいしばって、もはや決心を翻さなかった
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