結婚し、純粋にゲルマン式な環境にはいって以来、その魅力は彼女にとって、反発心のためいっそう強くなったのであろう。
クリストフに会った最初の晩から、彼女はいつもの持論をもち出した。彼女はフランス人の会話の愛すべき自由さをほめた。クリストフも相槌《あいづち》をうった。彼にとっては、フランスはコリーヌであった。美しい輝いた眼、にこやかな若々しい口、腹蔵ない自由な態度、いかにも調子のいい声。彼はそれについてもっと知りたくてたまらなかった。
リーリ・ラインハルトは、クリストフと非常によく意見が合うので、手を打って喜んだ。
「残念ですわ、」と彼女は言った、「フランス人の若いお友だちがもうここにいないのは。でも仕方がなかったんです。よそへ行ってしまいました。」
コリーヌの面影はすぐに消えてしまった。あたかも花火の輝きが消えて、暗い空の中に突然、星のやさしい深い光が現われるように、他の面影が、他の眼が、現われてきた。
「だれですか。」とクリストフはぎくりとして尋ねた。「若い家庭教師ではありませんか。」
「え!」とラインハルト夫人は言った、「あなたも御存じですか。」
二人はその女の様子を述べた。どちらも同じ姿だった。
「あなたはその女《ひと》を御存じですね。」とクリストフはくり返した。「どうか知ってるだけのことを私に聞かしてください。」
ラインハルト夫人は、自分たちは親友で万事をうち明け合った間柄だということから、まず話しだした。しかしその詳細に立ち入ると、彼女のいわゆる万事はごくつまらないことになってしまった。二人は初め他人の家で出会った。ラインハルト夫人の方からその若い女に交際を求めた。そして例の懇篤さで、話しに来てくれと招いた。若い女は二、三度やって来た。そして二人は話をした。けれども、好奇なリーリがその若いフランス婦人の生活を多少知るのも、そう容易なことではなかった。向こうは非常に慎み深かった。わずかずつ身の上話を引き出さなければならなかった。ラインハルト夫人は、彼女がアントアネット・ジャンナンという名前であることをまさしく知った。彼女には財産はなかった。家族としては、パリーに残ってる若い弟があるきりで、彼女は献身的にその弟を助けていた。たえずその弟のことを話していた。彼女が多少感情を吐露するのは、その話にばかりだった。そしてリーリ・ラインハルトは、両親もなく友だち
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