クリストフはそれが社会主義の新聞であることを知った。
「私は別に悪いとは思いません。」と彼は言った。
「なに、なんだと!」と大公爵は金切声で叫んだ。「不謹慎な!……この恥知らずの新聞めは、毎日|私《わし》を侮辱してるんだ、私に下劣な悪口を吐いてるんだ……。」
「殿下、」とクリストフは言った、「私はその新聞を読んだことがございません。」
「嘘《うそ》をつくな!」と大公爵は叫んだ。
「私は嘘をついてると言われたくありません。」とクリストフは言った。「読んだことはございません。私は音楽に関係してるだけであります。それにまた、どういうところへ書こうと、それは私の権利であります。」
「お前にはただ黙る権利しかないんだ。私《わし》はお前たちに親切すぎた。お前の不品行やお前の父の不品行によって、もう疾《とっ》くに追い払う理由があったにもかかわらず、お前たち一家の者に恩恵を施してやった。私はお前に、私と敵対する新聞につづけて書くことを禁ずる。それからまた、どんなことであろうとも、今後私の許可なくして書くことを一般に禁ずる。お前の音楽上の筆戦にはもうたくさんだ。私の保護を受けてる者が、趣味と心を有する人々にとって、ほんとうのドイツ人にとって、貴重であるあらゆるものを攻撃して、時間をつぶすのを私は許さない。お前はりっぱな音楽を書く方がよい。もしそれができなければ、音階や練習に精を出す方がよい。国家的光栄を誹謗《ひぼう》したり人々の精神を混乱さしたりして喜ぶ、音楽上のベーベルを私は欲しない。われわれはありがたくも、何がよいかを知っている。それを知るには、お前から説き聞かされるのを待つ要はない。だからお前はピアノに向かうがよい。そしてわれわれを平和にしておいてもらいたいのだ。」
でっぷり肥《ふと》った彼は、クリストフと顔を向き合わして、侮辱的な眼で相手の顔をうかがっていた。クリストフは色を失って、口をききたがっていた。その唇《くちびる》はかすかに動いていた。彼は口ごもりつつ言った。
「私は殿下の奴隷ではありません。言いたいことを言います、書きたいことを書きます……。」
彼は息をつまらしていた。恥辱と憤怒《ふんぬ》とに泣かんばかりになっていた。両足は震えていた。片|肱《ひじ》を急に動かしながら、傍《かたわ》らの家具に乗ってた器物をひっくり返した。自分の様子がいかにもおかしいのをはっきり
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