ったということを、聞き知った。
「君は実に偉い!」とマンハイムは叫んだ。「僕なんか比べものにもなりゃしない。」
「僕がどうしたというんだい!」とクリストフは言った。
「君には感服だ!」とマンハイムは言った。「僕はうらやましいよ。桟敷を奪ってグリューネバウムの奴《やつ》らに鼻をあかしながら、その家のフランス語の家庭教師を代わりに招待するなんて……いや、花輪でもささげたいくらいだ。僕には考えもつかなかった。」
「グリューネバウムの家の家庭教師だったのかい?」とクリストフは茫然《ぼうぜん》として言った。
「そうだ。知らないふりをするがいいよ、罪のないふうをするがいいよ。僕もそれを勧めるね。……親父《おやじ》はもう心を和らげまい。グリューネバウムたちはたいへん怒ってる。……気長い話じゃないんだ。女を追っ払っちゃったよ。」
「なに、」とクリストフは叫んだ、「追い出したって!……僕のために追い出したのかい?」
「君は知らないのか。」とマンハイムは言った。「あの女は君に言わなかったのか。」
クリストフは心が暗くなった。
「気をもむには及ばないよ、君、」とマンハイムは言った、「大したことじゃないからね。それに、どうせそうなるにきまってるよ、いつかグリューネバウムたちに知られたら……。」
「何を?」とクリストフは叫んだ、「何を知られるんだい。」
「君の情婦だということをさ。」
「僕はあの女を知りもしないよ。名前さえ知らないんだ。」
マンハイムは微笑した。その意味はこうだった。
「君は僕を間抜けだと思ってるんだね。」
クリストフは腹をたてた。自分の断言することを信じてくれとマンハイムに迫った。マンハイムは言った。
「それではなおさらおかしな話だね。」
クリストフはいきりたって、グリューネバウムたちに会いに行き、事実を物語り、あの女のあかしをたてる、と言い出した。マンハイムはそれを諌《いさ》めた。
「ねえ君、」と彼は言った、「君がどんなに説きたてても、反対のことをますます信じさせるばかりじゃないか。それにもう手後《ておく》れだよ。今時分あの女は遠くに行ってるだろう。」
クリストフは悲痛な気持になって、その若いフランス婦人の行くえを捜そうとつとめた。彼女に手紙を書いて許しを乞《こ》いたかった。しかしだれも彼女のことをまったく知らなかった。グリューネバウム家の人たちに尋ねたが、ただ
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