ようなものばかりであった。笑うべき土竜《もぐら》の巣だ! 生命が一過すれば、すべては清掃されるのだ……。
 クリストフは精力に満ちあふれながら、時々、破壊し、焼きつくし、粉砕し、息苦しい自分の力を盲目狂暴な行為で飽満させたいという、欲望に駆られた。たいていそういう発作は、突然の精神|弛緩《しかん》に終ることが多かった。彼は涙を流し、地上に身を投出し、大地に抱きついた。それにかじりつき、しがみつき、それを食いたかった。彼は熱気と欲求とに震えていた。
 ある夕方、彼は林の縁を散歩していた。眼は光に酔わされ、頭はふらふらしていて、すべてが変容される狂熱状態にあった。ビロードのような夕の光が、さらに魅惑を添えていた。紅色と黄金色との光線が、栗《くり》の木立の下に漂っていた。燐光《りんこう》のような輝きが、牧場から発してるようだった。空は眼のように悦《よろこ》ばしくやさしかった。横の牧場に、一人の娘が刈草を動かしていた。シャツと短い裳衣《しょうい》だけで、頸《くび》と腕とを露《あら》わにして、草をかき集めては積んでいた。短い鼻、広い頬《ほお》、丸い額、そして髪にハンカチをかぶっていた。その日焼け
前へ 次へ
全295ページ中91ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング