は、強い愛情が与えてくれる確実な本能をもって、一挙に、友の心をとらえ得る道を見出すことができた。彼女は直接彼に向うことをしなかった。怪我がなおって、ふたたび家の中を駆け回れるようになると、彼女はルイザに近づいた。ごくわずかな口実ででもよかった。ちょっとした用をやたらに見つけてはルイザを助けてやった。出かける時には、かならず何か使いを頼ませた。代りに市場へ行ってやり、用達人らと談判してやり、中庭のポンプで水をくんできてやり、家庭内の仕事の一部まで引受けて、敷石を洗い床板をみがいてやった。ルイザが断ってもきかなかった。ルイザは自分一人で仕事をさしてもらえないのを当惑したが、しかし非常に疲れきっていて、助けに来てくれるのに反対するだけの力がなかった。クリストフは終日不在だった。ルイザは一人ぽっちの寂しさを感じていた。そしてこの親切な騒々しい娘といっしょにいるのは、彼女のためによかった。ローザは彼女の許《もと》に腰をすえてしまった。自分の仕事までもってきた。そして二人は話しだした。娘は下らない策をめぐらして、話をクリストフの上に向けようとつとめた。彼の噂《うわさ》をきくと、ただ彼の名前をきくだ
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