れがあえて神の意志にそむくことをなし得よう? それでレオンハルトは、議論を長くつづけようとは固執しなかった。そしてただ、当分のうちは仕方がない、いくら論じても、道を見まいと決心してる者にはそれを示すことはできない、祈らなければいけない、御恵みにすがらなければいけない、と静かに言うだけで満足した。神の恵みなしには何事もできはしない。御恵みを望まなければいけない。信ずるためには欲しなければいけない。
欲する? とクリストフは苦々しく考えた。それならば神は存在するだろう、なぜなら神が存在することを自分が欲するのだから。それならばもう死は存しないだろう、なぜなら死を否定するのが自分にうれしいから。……嗚呼《ああ》!……真理を見る心要のない人々、自分の欲するとおりの形に真理を見ることができ、自分の気に入る幻をこしらえることができ、その中に甘く眠ることができる人々、彼らにとっては人生はいかに気楽であることだろう! しかしクリストフは、決してそういう寝床には眠れないに違いなかった……。
レオンハルトはなおつづけて話した。好きな話題に話をもどして、観照的生活の魅力を説いた。そしてこの危険のない境地
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