くて、理論にはすぐに屈するだけの鑑識をそなえたものであると信じていたから、まず最初に、経典や福音書の権威や奇跡や伝統などの力を借りて説いた。しかし、クリストフがしばらくその言葉に耳を傾けた後、それは問いをもって問いに答えることであって、自分が求めてるのは、ちょうど自分の疑惑の対象となってるところのものを示してもらいたいのではなく、疑惑を解く方法を示してもらいたいのであると言って、彼の言葉をさえぎると、彼は顔色を曇らし始めた。クリストフは思ったよりいっそう不健全であり、理性によってしか説服されまいと自負してることを、レオンハルトは認めざるを得なかった。けれども彼はなお、クリストフが唯我独尊主義者の真似《まね》をしている――(彼は本心から唯我独尊主義者たり得る者があろうとは想像だもしなかった)――のだと考えた。で彼は落胆もせず、最近に得た学問を鼻にかけて、学校で習い覚えた知識に頼った。そして命令よりもいっそうおごそかな調子で、神と不滅なる魂との存在の形而《けいじ》上学的証拠を、ごたごたと並べたてた。クリストフは気を張りつめ、額に皺《しわ》を寄せて一生懸命になり、黙って考えつめていた。彼はレ
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