ででもあるかのように、気色を損じた様子をする者もあった。けれどもこういう人たちは、自分の事柄にたいして最も確信をいだいてる者では恐らくなかったろう。またある者らは、肩をそびやかして微笑《ほほえ》みながら言った、「なあに、信仰は別に害になるもんじゃない。」そして彼らの微笑は言った、「そしていかにも便利だよ!……」そういう者どもをクリストフは心から軽蔑《けいべつ》した。
彼は自分の不安を牧師に打ち明けようとしたことがあった。しかしそのためにかえって勇気がくじけてしまった。彼は真面目《まじめ》に牧師と議論することができなかった。向うはいかにも愛想がよかったけれども、クリストフと彼との間には実際的に平等さがないことを、ていねいに感じさしてくれた。彼の優越は論ずるまでもなく分りきったことで、一種の無作法さをもってしなければ彼が押しつけた範囲から議論は出ることができないと、前もって定まっているかのようだった。敵の竹刀《しない》を交《か》わすだけの稽古《けいこ》試合だった。クリストフが思い切って範囲を踏み越え、一廉《ひとかど》の男にとっては答えるのも面白くないような質問をかけると、彼はただ庇護《ひ
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