「いいえ、私が思いついて……。」
彼は眼つきで彼女に感謝した。ローザの心は解けた。
「かわいそうに……クリストフさん!」と彼女は言った。
彼女は泣きながら彼の首に飛びついた。クリストフはその純な愛情の貴《とうと》さを感じた。彼はどんなにか慰めてもらいたかった。彼は彼女を抱擁した。
「ありがとう。」と彼は言った。「ではあなたもあの女を愛していたんだね?」
彼女は彼から身を離し、熱烈な眼つきで彼を見やり、なんとも答えず、また泣きだした。
その眼つきは彼にとっては一の光明であった。それはこう言ってるがようだった。
――私が愛していたのは、あの女ではない……。
クリストフはついに見てとった、まだ知らなかったことを――幾月も前から見ようと欲しなかったことを。彼は彼女から愛されていたことを見てとった。
「しッ!」と彼女は言った、「私を呼んでるのよ。」
アマリアの声が聞こえていた。
ローザは尋ねた。
「家へ行きますか?」
彼は言った。
「いや、まだ駄目だ、母と話をすることなんかできない……。あとで……。」
彼女は言った。
「ここにいらっしゃいな。じきにもどってくるから。」
彼は
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