室の中にごたごた積み重ねてあり、夜になりかかってはいるしするので、クリストフとルイザとは、一人は箱の上に、一人は袋の上に、疲れはててがっかりして腰を降ろしていたが、その時階段に、小さな空咳《からせき》が聞こえた。扉《とびら》をたたく音がした。オイレル老人がはいって来た。親愛なる借家人たちの邪魔をするのをていねいに詫《わ》びて、それから、よくやって来てくれたその最初の晩を祝うために、家の者といっしょに親しく晩餐《ばんさん》を共にしてほしいと言い添えた。ルイザは悲しみに沈んでいて、断りたいと思った。クリストフもまた、その内輪の会合にあまり気が進まなかった。しかし老人はたって勧めた。でクリストフは、新しい家の最初の晩を悲しい考えにふけってばかり過ごすのは、母にとってよくないと考えて、彼女に無理に承諾さした。
 二人は階下《した》に降りて行った。そこには一家の者が皆集まっていた。老人、その娘、婿のフォーゲル、クリストフより少し年下の男女の二人の孫。皆彼らを取り巻いて、よく来てくれたと言い、疲れてやしないかと尋ね、部屋《へや》は気に入ったか、用はないか、などと種々なことを尋ねた。そして皆が一度に
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