ことじゃありませんわ。」と彼女は快活に答えた。
しかし彼女は多少きまりが悪かった。
「片付けるのはほんとに厭ですもの。」と彼女は言った。「一日一日と片付けるのを延ばして……でも明日《あした》はきっとしますわ。」
「手伝ってあげましょうか。」とクリストフは言った。
彼女は断った。承知したくはあったが、人から悪口を言われそうなので承知しかねた。それにまた、面目なかった。
二人は話しつづけた。
「そしてボタンは?」と彼女はやがてクリストフに言った。「リージさんのところへいらっしゃらないんですか。」
「行くもんですか。」とクリストフは言った。「あなたが片付けるのを待っています。」
「あら、」とザビーネは今言ったことをもう忘れて言った、「そんなにいつまでも待っちゃいけません!」
その心からの叫びが、二人を快活になした。
クリストフは彼女がしめた引き出しに近づいた。
「僕に捜さしてください。」
彼女はそれを止《と》めようとして、駆け寄った。
「いえ、いえ、どうぞ。確かにありませんのよ……。」
「ありますとも、きっと。」
すぐに彼は、得意然としてほしいボタンを引き出した。なお他にも要《
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