トーも心を開いて、自分もまた幸福ではないとうち明けた。彼は弱くて臆病《おくびょう》で、友人らに乗ぜられがちだった。彼らは彼を嘲《あざけ》り、皆の共通な態度を難ずることを彼に許さず、意地悪く彼をからかってばかりいた。――クリストフは拳《こぶし》を握りしめて、自分の前で彼らがそんなことをしたら、思い知らしてやると言った。――オットーもまた家の者から理解されていなかった。クリストフもそういう不幸を知りつくしていた。そして二人はたがいの不運を憐れみ合った。ディーネルの両親は、彼を商人にして父の後を継がせるつもりだった。しかし彼は詩人になることを望んでいた。たといシルレルのように町から逃げ出して、困苦と戦わなければならないとしても、詩人になるつもりだった。(それにもとより、父の財産はすっかり彼のものとなるはずだったし、その財産も僅少《きんしょう》なものではなかった。)彼は顔を赤らめながら、生の悲しみを歌った詩を書いたことがあると告白した。しかしクリストフがいかに願っても、それを誦《しょう》する気にはなりかねた。けれどもついに、感動のあまりむちゃくちゃな口調でその二、三句を聞かした。クリストフはそ
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