両手をやり長々と寝転んだまま、平然と言った。
「いいさ!」
それから彼はオットーの方を眺め、そのびっくりした顔付を見、そして笑いだした。
「ここは実に気持がいい。」と彼は説明した。「僕は行かないよ。待ちぼうけさしてやるさ。」
彼は半ば身を起こした。
「君は急ぐのかい。そうじゃないだろう。どうだい、こうしようじゃないか。いっしょに食事をしよう。僕が料理屋を一軒知ってる。」
ディーネルは定めし異議をもち出したかったろう。だれかに待たれてるからではないが、不意の決心がつきにくかったからである。彼はいったい几帳面《きちょうめん》なたちで、前からちゃんと予定を作っておく方だった。しかしクリストフは、ほとんど拒むことを許さないような調子で尋ねたのだった。でディーネルはそれに引きずり込まれてしまった。二人はまた話しだした。
料理屋へはいると、彼らの熱情は消えた。どちらが昼食をおごるかという重大な問題に、二人とも気をもんだ。どちらも、自分が昼食をおごって体面を見せようと、ひそかに考えていた、ディーネルは金持ちだからという理由で、クリストフは貧乏だからという理由で。彼らはその考えを露《あら》わに
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