彼は考える。彼らの魂は、それらの音楽の中にふたたび蘇《よみがえ》ってくる。愛で心がいっぱいになりながら、彼は超人間的な幸福を夢みる。それはこの光栄に満ちた畏友《いゆう》らのもっていたものに違いない、彼らの幸福の一反映ですらなおかくも燃えたっているのを見れば。彼らのようになろうと彼は夢想し、そういう愛を放射しようと夢想する。その愛の数条のかすかな光は、聖《きよ》き微笑《ほほえ》みで彼の惨《みじ》めさを照らしてくれる。こんどは自分が神となり、喜びの祠《ほこら》となり、生命の太陽となるのだ!……
ああ、もし彼が他日、愛するそれらの楽匠らと等しくなるならば、希求してるその輝く幸福に到達するならば、すべては幻にすぎなかったことがわかるであろう。
[#改ページ]
二 オットー
ある日曜日に、クリストフは楽長から、小さな別荘で催される午餐《ごさん》へ招待を受けた。その別荘はトビアス・プァイフェルの所有で、町から一時間ばかりの距離にあった。クリストフはライン河の船に乗った。甲板で彼は、同じ年ごろの少年から慇懃《いんぎん》に席を譲られて、そのそばに腰をおろした。彼は別にそれを気にも止
前へ
次へ
全221ページ中73ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング