分を玩具《おもちゃ》にしてるのを発見すると、ひどく殴り飛ばしてやった。けれどもその後で、彼らから面白がって釣《つり》針を投げられると、ふたたびそれにすぐ引っかかるのだった。
なおそれにもまさった苦しみが彼にはあった。父が自分のことを悪く言ってるのを、おせっかいな近所の人々から聞かされた。メルキオルは初め息子の成功に得意然としていたが、後には恥ずべき弱点を暴露して、それを嫉妬《しっと》するようになった。彼は息子の成功をくじこうとした。それは嘆くも愚かなことだった。ただ軽侮の念から肩をそびやかすのほかはなかった。腹もたてられなかった。なぜならメルキオルは、自分のやってることに自覚がなかったし、失意のためにひねくれていたから。クリストフは黙っていた。もし口をきいたらあまりひどいことを言うようになるだろうと恐れていた。しかし心では恨めしくてたまらなかった。
悲しい寄合い、夕、ランプを取り囲み、汚点のついた布卓の上で、つまらない世間話や貪《むさぼ》り食う頤《あご》の音の間でする、一家そろうての夕食! しかも彼はそれらの人々を、軽侮し憐れみながらも、やはり愛せずにはいられないのである。そして彼
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