》にがっくりとすわり、疲労に感覚を失いながら、なおそこに起きている。
 彼は弟どもともなんらの親しみももたなかった。エルンストは十二歳になっていた。性《たち》の悪い厚かましい無頼な少年で、同じような不良の徒と終日遊び暮していた。そしてその仲間の、嘆かわしい様子にばかりでなく、恥ずべき習癖にも染んでいた。正直なクリストフは、ある日、思いも及ばない恥ずかしいことを彼がやってるのを見かけて、嫌悪の眉《まゆ》をひそめた。も一人の弟ロドルフは、テオドル伯父《おじ》の気に入りで、商業をやることになっていた。彼は行ないもよく、静かだったが、陰険であった。クリストフよりずっとすぐれてると信じていた。クリストフが稼《かせ》いだパンを食べるのは当然だと考えていながら、家におけるクリストフの権力を認めなかった。彼にたいするテオドルとメルキオルとの反感に味方して、二人が言うおかしな悪口をくり返し言っていた。二人の弟はどちらも音楽を好まなかった。ロドルフは模倣心から、伯父のように音楽を軽蔑するふうをしていた。家長の役目を真面目にやってるクリストフから、いつも監視され訓戒されるのに困って、二人の弟は反抗を試みるこ
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