自分の上にも光被《こうひ》してくるかのように楽しんでいた。そしていくら平然と構えていようとしても、顔が輝いていた。クリストフが宮邸へ行った晩には、いつもジャン・ミシェル老人は、なんらかの口実を設けてルイザのところに留っていた。子供らしくやきもきしながら、孫の帰りを待っていた。そしてクリストフがもどってくると、何気ないふうでまず彼に言葉をかけた。つまらない問いのこともあった。
「どうだい、今夜はうまくいったかい。」
あるいは、わざとらしい遠回しの言葉のこともあった。
「さあクリストフ坊やのお帰りだ、何か珍しいことを話してくれるだろう。」
あるいは、おだてるためのうまいお世辞のこともあった。
「家の若様、おめでとう!」
しかしクリストフは、むっとして苛立《いらだ》っていて、ごく冷やかに「今晩は!」と一言|挨拶《あいさつ》を返すばかりで、隅の方へ行って口をとがらすのであった。老人はしつこく言い寄って、いっそう明らさまな問いをかけたが、子供はただはいとかいいえとか答えるばかりだった。他の者もいっしょになって、種々こまかなことを尋ねだした。クリストフはますます顔をしかめた。むり強《じ》いに
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