こんないいやり方は彼奴《あいつ》には初めてだ。ああ、あの年|甲斐《がい》もない酔いどれに、どうしてこんな決心ができたのかな。」
彼はぴたりと言い止めた。クリストフが彼の手からその書面を引ったくったのである。クリストフは憤りに顔色を変えて叫んだ。
「許せない……僕を侮辱するのは許せない!」
役人は呆気《あっけ》にとられた。
「なあにクリストフさん、」と彼はつとめて言った、「だれがお前を侮辱しようと思うものかね。私は皆が考えてることを言ったばかりだ。お前さんだってそう考えてるだろう。」
「いいや!」とクリストフは腹だたしげに叫んだ。
「なに、お前さんはそう考えないって? 酒飲みだとは考えないって?」
「そんなことはない。」とクリストフは言った。
彼は足をふみ鳴らしていた。
役人は肩を聳《そびや》かした。
「そんなら、どうしてこんな手紙を書いたんだい。」
「どうしてって……」とクリストフは言った――(もうどう言っていいかわからなかった)、「それは、僕が毎月、自分の給料を取りに来るから、いっしょにお父さんのももらっていかれる。二人ともやって来るのは無駄だ……お父さんはたいへん忙しいんだ
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