お父さん、お父さん、蔑みはしません。ぼくは悲しいや!」
二人とも声高く泣いた。メルキオルは嘆いた。
「おれの罪じゃないんだ。これでもおれは悪人じゃない。そうだろう、クリストフ。ねえ、これでもおれは悪人じゃないんだ。」
彼はもう酒を飲まないと誓った。クリストフは疑わしい様子で頭を振った。するとメルキオルは、金が手にあると我慢ができないのだと自認した。クリストフは考えた、そして言った。
「そんなら、お父さん、こうしたら……。」
彼は言いよどんだ。
「どうするんだい?」
「気の毒で……。」
「だれに?」とメルキオルは質樸《しつぼく》に尋ねた。
「お父さんに。」
メルキオルは顔をしかめた。そして言った。
「かまやしないよ。」
クリストフは説明してやった、家の金はことごとく、メルキオルの給料もみな、他人に委託しておいて、毎日かもしくは毎週かに、必要なだけをメルキオルに渡してもらうようにしたらいいだろうと。すると、メルキオルは卑下した気持になっていたので――彼は酒に飢えきってはいなかった――申出での条件をさらにひどくして、自分が受けてる給料を自分の代理としてクリストフに正規に支払ってもら
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