かと、ますます強く喚《わめ》きたてた。彼はひどい折檻を受けることと期待していた。しかしメルキオルは、厭な笑顔で彼を眺め、そして口をつぐんだ。
翌日になると、クリストフはそのことを忘れていた。疲れてはいたがかなり上|機嫌《きげん》で家に帰って来た。ところが弟たちの狡猾《こうかつ》な眼付に気をひかれた。二人とも書物を読み耽《ふけ》ってるふうを装っていた。彼の様子を見守り彼の一挙一動を窺《うかが》いながらも、彼に見られるとまた書物に眼を伏せた。きっと何か悪戯《いたずら》をされたに違いないと彼は思った。しかしそんなことに慣れていた。悪戯を見つけたらいつものとおり殴りつけてやろうときめていたので、別に心を動かさなかった。それであえて穿鑿《せんさく》しようともしなかった。そして父と話しだした。父は暖炉の隅にすわっていて、柄にもなく興味あるふうを見せながら、その日のことを尋ねだした。彼は話してるうち、メルキオルが二人の子供とひそかに目配《めくば》せしてるのを認めた。彼は心にはっとした。自分の室に駆け込んだ。……ピアノの場所が空《から》になっていた。彼は悲しみの叫び声をあげた。向うの室に弟たちの忍び
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