子が非常に骨折って得たものまで飲んでしまった。ルイザは泣いてばかりいた。家の中に彼女の物とては何にもないし、彼女は一文なしで結婚して来たのだと、昔のことを夫からきびしく言われてから、もう抵抗するだけの元気もなかった。クリストフは逆らってやった。するとメルキオルは彼を殴りつけ、悪戯《いたずら》っ児《こ》扱いにし、その手から金を奪い取った。子供はもう十二、三歳で、身体は頑丈で、折檻《せっかん》されると怒鳴り出した。けれどもまだ反抗するのが恐かった。取られるままになっていた。ルイザと彼と、二人の唯一の手段は、金を隠すことだった。しかしメルキオルは、二人が不在な時に、その隠し場所を見つけるのに不思議なほど巧みだった。
 間もなく、彼はもうそれでもあきたらなくなった。彼は父から受け継いだ品物を売った。書物や、寝台や、家具や、音楽家の肖像などが、家から出てゆくのを、クリストフは悲しげに眺めた。彼はなんとも言うことができなかった。しかし、ある日メルキオルが、祖父の贈物の古ピアノにひどくつき当たり、膝《ひざ》をなでながら怒りに任してののしり、家の中が動けないほどいっぱいになってると言い、こんな古道具は
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