い様子になる。しかしすぐその後で、彼はまた活発に話しだし身振りをやりだす。彼はほんとうに心を痛めている、しかし悲しい感銘の中にとどまっていることができないのである。
消極的で忍従的なルイザは、何事をも受けいれると同様に、その不幸をも受けいれた。彼女は日ごとの祈祷に添えて、も一つ祈祷をしている。几帳面《きちょうめん》に墓地へ行き、あたかも家事の一部ででもあるかのように、墓の世話をしている。
ゴットフリートは、老人が眠ってる小さな四角な地面にたいして、非常にやさしい注意を向けている。その地へもどって来る時には、何か記念になる物や、自分の手でこしらえた十字架や、ジャン・ミシェルが好んでいた花などをもって来る。決してそれを欠かすことがなく、しかも人知れずするのである。
ルイザは時々、クリストフを墓参に連れてゆく。花や木の無気味な飾りに覆《おお》われてるその肥えた土地、さらさらした糸杉の香気に交って日向《ひなた》に漂ってる重々しい匂いが、クリストフはひどく嫌いである。しかしその嫌悪の情を口には出さない。卑怯《ひきょう》のようでもあり不信のようでもあって、気がとがめるからである。彼はたいへん
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