音が聞えるように思った。しかし身を動かしたくなかった。夢の中にいるようだった。
彼が眼を開いた時、叔父のゴットフリートが寝台の足下に腰掛けていた。クリストフはぐったりしていて、何にも覚えていなかった。次に記憶が蘇《よみがえ》ってきて、泣き始めた。ゴットフリートは立上がり、彼を抱擁した。
「どうした、坊や、どうした?」と彼はやさしく言っていた。
「ああ、叔父《おじ》さん、叔父さん!」と子供は彼にすがりついて泣声でうなった。
「お泣きよ、」とゴットフリートは言った、「お泣きよ!」
彼も泣いていた。
クリストフは少し心が静まると、眼を拭《ふ》いて、ゴットフリートを眺めた。ゴットフリートは彼が何か尋ねたがってるのを覚《さと》った。
「いや、」と彼は子供の口に指をあてながら言った、「口をきくもんじゃない。泣くのはいい、口をきくのはいけない。」
子供は承知しなかった。
「無駄《むだ》だよ。」
「ただ一事《ひとこと》、たった一つ……。」
「なんだい?」
クリストフは躊躇《ちゅうちょ》した。
「ああ、叔父さん、」と彼は尋ねた、「あの人は今どこにいるの?」
ゴットフリートは答えた。
「神様と
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