も認めていなかった。百歳で死ぬだろうと人に予言されると、天意による恩恵には制限を付すべきものではないと、世に名高いあの高齢者と同様なことを考えていた。彼が老いてゆくのを認められるのはただ、ますます涙もろくなることと、日に日に怒りっぽくなることばかりだった。ちょっとした我慢がしきれずに、狂気じみた憤怒の発作を起こした。その赭《あか》ら顔と短い頸《くび》とが真赤になった。恐ろしく口ごもって、息がつけないで言いやめなければならなかった。旧友でありまたかかりつけである医者が、自分で用心をするように彼に注意し、憤怒と食欲とをともに節するように注意を与えていた。しかし彼は老人の癖として頑固《がんこ》で、ますます不節制をして虚勢を張っていた。医学と医師とを嘲《あざけ》っていた。死をひどく軽蔑してるふうを装って、少しも死を恐れていないと言い切るためには、長々と弁じたててやめなかった。
 ごく暑い夏のある日、たくさん酒を飲んでおまけに議論をした後、彼は家に帰って、庭で働きだした。彼は地を耕すのが好きだった。帽子もかぶらず、日の照る中で、まだ議論のために激昂《げきこう》したまま、疳癪《かんしゃく》まぎれに
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