。愛くるしい若い女と古い友人とを、彼は好きだったのである。そういうふうにして道で手間取って、決して時間を頭においていなかった。けれども食事の時間を通り過すことはなかった。人の家に押しかけて行って、どこででも食事をした。自宅にもどるのは、長く孫たちの顔を眺めた後、晩に、夜になってからだった。寝床にはいると、眼を閉じる前に、古い聖書の一ページを寝ながら読んだ。そして夜中に――一、二時間以上は眠りつづけることができなくなっていたから――起き上がって、時おり買い求めた歴史や神学や文学や科学などの古本を、どれか一冊取上げた。そして手当たりしだいに、面白かろうと、退屈しようと、よくわからなかろうと構わずに、一語もぬかさず、いくページかを読むのであった……また眠気がさしてくるまでは。日曜日には、教会の礼拝式に行き、子供らと散歩をし、球《まり》遊びをした。――かつて病気にかかったことがなかった。ただ足指に少し神経痛の気味があって、聖書を読んでる最中に、夜を呪《のろ》うことがあるばかりだった。その調子でゆくと、百年くらいは生き存《ながら》えられそうに思われた。また彼自身も、百歳を越せないという理由を少し
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