らせると約束していた。彼はたえず、彼女らを迎えに行こうと待ちかまえていた。そしてかく帰りが遅れる理由を、種々思い迷った。
ある晩、隣りに住んでる人で、祖父の友であった家具商のフィシェルがいつもよくやるように、晩食後やって来て、メルキオル相手にパイプをふかしたり無駄話をしたりした。クリストフは配達夫の通るのを空しく待受けたあとで、憂いに沈みながらまた自分の室に上ってゆこうとした。その時、ふと聞いた一言に彼は震え上がった。翌朝早くケリッヒ家へ行って窓掛をつけなければならないと、フィシェルは言っていた。クリストフははっとして尋ねた。
「そんなら帰って来たんですか。」
「とぼけちゃいけない。お前だってよく知ってるじゃないか。」と老フィシェルはひやかし気味に言った。「だいぶ前のことだ。一昨日《おととい》帰って来てらあね。」
クリストフはもうそのうえ何にも耳にはいらなかった。彼は室から出て、出かける支度をした。母は先ほどからそっと彼の様子を窺《うかが》っていたが、廊下までついて来て、どこへ行くのかとおずおず尋ねた。彼は返辞もしないで出て行った。彼は苦しんでいた。
彼はケリッヒ家に駆け込んだ。
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