《ろば》だと言った。彼はそれに答え返して、彼女[#「彼女」に傍点]の小さな驢馬でさえあるならば、彼女から追い出されさえしなければ、驢馬でもかまわないと言った。彼女はわざわざ小言をいってみた。それから、彼はごく馬鹿な賤《いや》しい小さな驢馬ではあるけれども、たといなんの役にもたたなくとも、せめてただおとなしく[#「おとなしく」に傍点]さえしていれば、家に置いてやることは――そしてまたかわいがってやることをも――承知すると言った。二人とも笑っていた。彼は喜びの中に浸っていた。
ケリッヒ夫人に恋してることがわかって以来、クリストフはミンナから離れていった。人を軽蔑した彼女の冷淡さに憤り始めた。そして、彼女としばしば会っていたので、しだいに遠慮しなくなってきたから、彼はもう自分の不機嫌《ふきげん》さを隠さなかった。彼女は好んで彼につっかかり、彼はそれにきびしく応答した。彼らはいつも不快なことを言い合った。ケリッヒ夫人はそれをただ笑うばかりだった。クリストフはその言葉争いに勝目がなかったから、時には憤然として出て行って、ミンナを大嫌いだと考えることもあった。そしてまたその家へもどって行くのも
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