読んでいた。勇士や王の言葉を読む時には、声を少し濁らして重々しい調子をしようとしていた。時とすると、ケリッヒ夫人みずから書物を手にとって、彼女本来のやさしい理知的な風情《ふぜい》を、悲壮な物語に添えることもあった。しかし多くは、人の読むのに耳を傾けながら、肱掛椅子《ひじかけいす》に仰向《あおむけ》によりかかり、いつまでもできあがらない仕事を膝の上にのせ、自分自身の考えに微笑《ほほえ》んでいた――なぜなら、どんな書物であろうと、その奥底に彼女が見出すところのものは、いつも彼女自身の面影であった。
クリストフもまた朗読しようとした。しかしそれを諦《あきら》めなければならなかった。彼は口ごもり、言葉にまごつき、句読点を飛び越し、何にもわからない様子であったが、しかも非常に感動していて、悲愴《ひそう》な部分になると、涙が出て来るのを感じて、読みやめなければならなかった。すると癇癪《かんしゃく》を起こして、書物をテーブルの上に投げつけた。二人の女はそれを見て笑った。……いかに彼は彼女らを愛していたろう! 彼はどこへ行っても、彼女らの面影を忘れなかった。その面影はシェークスピアやゲーテなどの面影
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