それにも及ばないと言い添えた。
「挨拶にいらっしゃるには及びませんわ。」とミンナはわざわざくり返して言った。「ただ、もし来てくださらないと、覚えていらっしゃいよ!」
彼女はかわいいおどかしの様子で指先を動かした。
ミンナはクリストフに来てもらいたいとも、または自分にたいして礼儀を守ってもらいたいとも、別に望んではいなかった。しかし彼にちょっと影響を与えるのが気持よかった。そういうことを彼女は本能的に面白いと思っていた。
クリストフは嬉《うれ》しくて真赤になった。ケリッヒ夫人は、彼にその母のことや、昔知っていた祖父のことなどを、巧妙に話しかけて、ついに彼の心を奪ってしまった。二人の婦人の懇篤《こんとく》な温情は、彼の身にしみ込んだ。彼はそのうちとけた好意を、その社交的な愛想を、真面目《まじめ》なものだと信じたい心から、誇大して感じた。そして無邪気な隔てなさをもって、自分の抱負や惨《みじ》めな境遇を語りだした。もはや時間の過ぎるのも気づかなかった。そして召使が食事を知らせに来た時、驚いて飛び上がった。けれども、今後仲のいい友だちになるのだから、いやすでになってるのだから、いっしょに食
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