っとして考えた。
ケリッヒ夫人は娘をさし示した。娘は書物を閉じて、クリストフをもの珍しそうに眺めていた。
「娘のミンナでございます、」と彼女は言った、「たいへんお目にかかりたがっていました。」
「でもお母様、」とミンナは言った、「初めてお目にかかったんではありませんわ。」
そして彼女は放笑《ふきだ》した。
「あのことを知られたんだな、」とクリストフはがっかりして考えた。
「ほんとに、」ケリッヒ夫人も笑いながら言った、「私どもが着きました日に、お訪ねくださいましたね。」
その言葉をきいて、娘はますます笑った。そしてクリストフがいかにもものあわれな様子をしたので、ミンナはそれを見ると、なお激しく笑った。まるで狂人笑いだった。あまり笑って涙を流していた。ケリッヒ夫人はそれをやめさせようとしたが、自分でも笑いを押えることができなかった。クリストフは当惑していたが、それでも笑いに感染してしまった。彼女らの上|機嫌《きげん》は押えることのできないもので、それを怒るわけにはゆかなかった。しかしミンナが息をつきながら、壁の上でいったい何をしていたのかと彼に尋ねた時、彼はまったく度《ど》を失ってし
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