夫人がなんらの悪意もいだいてないことをよく承知していたから。しかし、またそんな場合になったら、自分はやはり同じようなことをするだろうと、みずから知っていた。彼は往来で夫人に会うのを恐れた。夫人に似た姿を遠くに見かけると、彼は道をそらすのであった。

 夫人の方から彼を追っかけて来た。
 ある朝、彼が昼食のために家へ帰ると、ルイザは得意になって、仕着せをつけた従僕が彼あての手紙を届けてきたと話した。そして黒枠《くろわく》のついた大きな封筒を彼に渡した。裏にはケリッヒ家の紋章が印刻してあった。クリストフはそれを開いて、震えながら読んだ――まさしく次のとおりに。

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ヨゼファ・フォン・ケリッヒ夫人は、宮廷音楽員クリストフ・クラフト氏に、本日五時半、自宅にて御茶を差上げたく、御招待致します。
[#ここで字下げ終わり]

「ぼくは行かない。」とクリストフは言いきった。
「なんです!」とルイザは叫んだ。「行くと言っておいたよ。」
 クリストフは母に言い逆らった。自分の関係もないことにおせっかいするのを彼女に非難した。
「下男の人が返事を待っていたんだよ。今日はちょうどお前は暇
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