オットーは思い切って、震え声で口を切った。
「夕立だ。帰らなきゃいけない。」
クリストフは言った。
「帰ろう。」
しかしもう遅かった。眼が眩《くら》むような猛烈な一条の光がほとばしり、空が唸《うな》り、雲の丸天井がとどろいた。たちまちのうちに二人は、暴風雨にとりまかれ、電光におびえ、雷鳴に耳を聾《ろう》し、全身ずぶ濡《ぬ》れになった。平坦《へいたん》な野のまんなかで、どちらの人家へも三十分以上の距離があった、水の渦巻きの中に、ほのかな明るみの中に、雷電の巨大な光が真赤にほとばしっていた。彼らは走りたかった。しかし雨のために服がこわばりついて、思うように歩くことさえできなかった。靴《くつ》はぶくぶくしていた。全身に水が流れていた。息もつけないほどだった。オットーは歯をうち震わし、狂気のように猛《たけ》りたっていた。彼はクリストフに気を悪くするようなことを言いたてた。立ち止まりたがった。歩くのは危険だと言い張った。道にすわってしまう、畑のまんなかに地面に寝転んでやる、などと言っておどかした。クリストフは返辞をしなかった。彼はなお歩きつづけながら、風と雨と電光とに眼も眩み、響きに驚き、や
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