った。二人の子供は疳《かん》高い泣声をたてて家の中に逃げ込んだ。扉のがたつく音がし、怒った叫び声が聞えた。夫人は長衣の裳裾《もすそ》の許すかぎり早く駆けつけて来た。クリストフは彼女がやって来るのを見たが、逃げようとはしなかった。彼は自分の仕業に慄然《りつぜん》としていた。それはたいへんなことだった、罪であった。しかし彼は少しも後悔はしなかった。彼は待受けた。もう取り返しがつかなかった。それだけに始末もいい! 彼は絶望あるのみだった。
夫人は彼に飛びかかった。彼は打たれるのを感じた。激しい声でやたらに何か言われてるのを耳に聞いたが、なんのことだか少しも聞き分けられなかった。二人の敵は彼の恥辱を見物しにもどって来て、声の限り怒鳴りたてていた。召使らも来ていた。がやがや騒ぐばかりだった。最後に大打撃としては、ルイザが人に呼ばれてそこに出て来た。そして彼を庇《かば》うどころか、彼女もまた訳も分らない先から彼を打ち始め、謝《あやま》らせようとした。彼は怒って言うことをきかなかった。彼女はますます強く彼を突っつき、手をとらえて夫人と子供たちとの方へ引きずってゆき、その前にひざまずかせようとした。
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