いだいていた。ジャン・ミシェルの方でも、妻に深く感心していた。二人は琴瑟相和《きんしつあいわ》して十五年間を過し、四人の子供をもうけた。それからクララが死んだ。ジャン・ミシェルはその死をいたく嘆き悲しんだが、五か月たってからオティーリエ・シュッツと結婚した。顔が真赤で、頑丈《がんじょう》で、いつも上|機嫌《きげん》な、二十歳の娘だった。彼女はクララと同じくらいに美点をそなえていたし、ジャン・ミシェルもクララにたいしたのと同じくらいに愛してやった。ところが結婚後八年にして、彼女もまた死んだ。がそれだけの間に、七人の子供を生んでいた。合せて十一人の子供であるが、そのうち生き残ったのはただ一人きりだった。ジャン・ミシェルは非常に子|煩悩《ぼんのう》ではあったが、その幾度もの不幸も、彼の堅固な楽天的気質を変えはしなかった。最もひどい打撃は、オティーリエの死であった。それは今から三年前のことで、彼はもう、生活を立て直し新らしい家庭を作るには困難な年齢に達していた。しかし一時途方にくれた後に、彼はまた精神の平衡を回復した。いかなる不幸も、このジャン・ミシェル老人から、精神の平衡を失わしめることはで
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