まど》の中で鳴いている。祖父の話が、英雄の面影が、楽しい夜の中に浮んでくる。……彼らのように英雄になる!……そうだ、自分は英雄になるだろう……いやもう英雄になっている……。ああ、生きてることはなんといいことだろう!……
いかにおびただしい力と喜びと誇りとが、この小さな存在のうちにあることぞ! いかにみちあふれた精力ぞ! 彼の身体と精神とは、息も止まるばかりに回転する輪舞のままに、常に動いている。一匹の小さな火蛇《かじゃ》のように、彼は昼も夜も炎の中に踊っている。何物にも疲らされず、あらゆる物から養われる、一の熱誠。物狂おしい夢、ほとばしる泉、無尽蔵な希望の宝、笑、歌、不断の陶酔。人生はまだ彼を捉《とら》えない。彼はいつも人生から脱して、無限のうちに泳いでいる。いかに幸福であることぞ! 幸福であるようにできてるのだ! 彼のうちには、幸福を信ぜないものは何もなく、その小さな熱中した全力を尽して幸福を目指さないものは、何もない……。
人生はやがて、彼を理性に従わしむることにみずから任ずるであろう。
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二
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曙《あけぼの》の前に小暗《お
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